【寄稿】上海山寨探訪記 ~「山寨」こと、パチモノを求めて~ その3


【前回までのあらすじ】
上海でパチモノゲームを探す一行。
「ツアー」の前哨戦で成果を上げて喜び、豪勢な夕食でおなかもいっぱいに。
まだ見ぬ「ツアー」での出会いに胸が高まるも
英気を養うため、高まる士気を沈めるように、眠りにつくのだった…。

よろず怪奇物事探究サークル・或隠舎 目目連(@mokumokuren

※前回の記事: その1  その2 


■疾風のように、パチモノツアー


曇天。

漆黒の帽子をかぶった集団が、繁華街を闊歩する。
帽子には赤い「麟閣山寨旅遊」の文字。一見、異様な集団だ。

すれ違いざまに、上海っ子たちがいぶかしそうな視線を投げかける。
目的不明の赤黒い旋風。見慣れた風景に突如登場した怪しげな軍団を見たのだ。
その反応もさもありなんというところだろうか。

そう、彼らこそが!
はるばるこの上海までパチモノゲームを探し求め、
1,000キロ以上の道のりを苦ともせずにやって来た、
麟閣パチモノツアー参加者たちなのだ!


ついに始まった麟閣パチモノツアー。
その参加者たちの勲章でもあるこの帽子は、麟閣さんが用意してくれたもの。

「麟閣」の文字部分が、何故か「閣」と誤って刺繍されたものが
最初に届くという、実にパチモノイベント用らしいアクシデントもあったそうだが
当日は、きちんとした文字入りのこの帽子が配布された。

見るたびに、このツアーを思い出す一品。
持ち帰ったパチモノと同様、宝物となった。ありがとうございました!


■オタク街で「ファミコン」発見


待ちに待った「麟閣ツアー」、まずはみんなで上海のオタク街へ向かう。
オタク向けショップに混じり存在するというゲーム屋が狙いだ。

着いてみると確かに街の雰囲気が違うが、
オタク街といっても、フィギュアを扱っている店が大半。


日本でも見覚えがあるキャラクターのフィギュアが陳列窓に並んでいる。
基本的には、日本で売られているものとあまり変わらない。


中には、感情を失ってしまったガッちゃんのような妙なものも。

だが中国にいると、この程度の怪しさには免疫がつき
「まあ、ガッちゃんでも感情を失う日くらいあるだろう」
程度で流してしまいそうになるのが怖い。

そして残念ながら、元々あったというゲーム専門店は
どうやら今は無くなってしまったらしい。

しかし、この手の街並みとゲームは親和性が高いはず。
現にフィギュアの元ネタもゲームのものが多い。捜索は続く。

ある者は片っ端から店をまわり、ある者は腹ごしらえをし
そしてある者は、フィギュア屋であの「邪神セイバー」は無いかと
スマホ画像を見せながら訪ね歩き、各店の人から露骨に嫌な顔をされるなど
独自の戦いを繰り広げていた。


そのうちの「草苺屋」という店へ。
年季の入った建物には、日本語を話す若い店主が。
「日本語は、アニメを見て覚えた」という。格好いいオタクだ。
アニメやラノベ関係の売り物を見物するも、ゲームがないかとそわそわする我々。

「ファミコンはある?」と聞いたところ、
「あるよ。2階に」という回答。これは来たっ!

ドキドキしながら2階へ向かう一同。

猛烈に使用感がある板製階段を、みんなでギッシギッシと登る。
まだ見ぬパチモノゲームに胸を高鳴らせ、進む!
そして2階で我々が見たものはっ!


店主らの居住スペースと思しき空間だった。

テレビの横には、ファミコンの互換機。ソフトも転がっていた。
ファミコンはうそ偽りなく、ちゃんと「あった」。
そう、売り物ではなく店主の部屋の家電製品として存在したのだ。

全員が内心「おまえの部屋やないか!」と思いながらも、
部屋にまで招きあげてくれたご店主の好意をかみしめ、微妙な笑みを浮かべる。

意思の疎通の困難さを感じながら、我々はまたあの「幽幻導士」に出てきそうな
悠久の年月を経た階段を踏みしめるのであった。


■迷い下敷き

オタク街の一角。なにやらにぎやかな所があった。
「孔子上海文庙」という孔子を祭った廟のようだ。そこで、古本市をしているらしい。

本といえば、攻略本や漫画などゲームと親和性が高いメディア。
中国の書籍が見られるならばと、見物することになった。

活気に満ちた境内には、所狭しと本が並ぶ。
本を中心としたフリーマーケットという塩梅だ。


順繰りに本を見ていて、どことなく見たことがあるような絵が目についた。
よく見ると「迷い猫オーバーラン!」の文字。下敷きだ。
一体何故ここに並んでいるのか、全くわからない。

近くに並ぶのは、中国の古典や医学書(?)など。
この下敷きの存在こそが、オーバーランなのではなかろうか。

ここに至った過程、そしてその因果を想像するだけでも
孔子の偉大さに思いを馳せざるを得なかった。

ここでも嬉しい出会いがあった。
「あっちに水木しげるの本があった」と教えてくれた参加者がいたのだ。


大喜びで捜索すると、水木しげるの「日本妖怪大全」などを中国語に訳した本を発見!
即購入した。1,000ページに迫る大著。これは大収穫だ。

他の参加者たちも、北朝鮮の通貨セットや毛沢東語録、
簡易な中国製のアメコミマンガ本を入手するなど
それぞれの関心が赴くままに、物品を入手しているようだった。


■中国の狂気バス

古本市を後にし、電化製品や日用品、玩具などを扱う市場へ。
残念ながら、ゲームを中心に売り出している店は見当たらなかったものの…


やけに押しの強いおばちゃんの店で聞いてみると、
なんと棚からパチモノゲームが登場!

ツアー最初のパチモノ登場ということでボルテージが上がる参加者たち。
「安くして」と、言おうものなら「値段は下げないっ!」と
デカイ声で言い返されるものの、品定めそのものはとても楽しく行うことができた。

自分たちの足で、直接訪れた所で見るパチモノはやはり格別。
参加者たちは高揚した雰囲気で、きっぷの良いおばちゃんとやり取りをしていた。
その後、個人的に回ってみたかった玩具屋さんも発見。

いきなりロボットにトランスフォームする「機関車トーマス」の玩具や
「ピッピッ!ピカチュー!」と歌い、踊り狂うピカチュウの人形など…
よくあるキテレツでインチキ臭い、中国の奇怪な玩具に興味があったのだ。
中国みやげとして、是非とも手に入れておきたい。

目を細めて品揃えをチェック。
が、そこまで突き抜けた怪しいブツは一見、存在しなかった。
ちょっとがっかりしながら去ろうとした、その時。

店のオヤジさんがバスのミニカーを触った。
すると、大音量で謎の音楽が流れながら、
バスの車内がパチンコ屋のようにけばけばしく光り輝く!

一見普通のミニカーだが、
このようなアホなギミックつきとは痺れざるを得ない!

『クレイジーバス』というゲームが好きすぎてBGMを聞きながら眠った
という逸話を持つ、筆者サークル共同代表への土産とすることにした。
あの人物ならば狂喜するだろう。


■雨中の行進。そして、くまモン

外は、曇天から雨に。

パチモノ戦士たちは新たなゲームを求め、
観光客向けのお土産などを扱うビルへ向かった。


雨中の道すがら、ここまで至った参加者たちの行程を思い出す。

「空港からバスに乗ろうとしたら、白タク業者に捕まったみたいで
暗がりに案内されそうになったのでダッシュで逃げてきました」
と、洒落にならないエピソードを語る参加者。
冷静な語り口ながら命に関わるタイプの内容に驚いた。

「深夜に上海の空港に到着し、朝までそのまま空港で過ごし、
ツアー後は翌日、早朝の便で日本へ帰る」

という、ツアー参加のために「休息」という概念を保留することにした強者も。

彼らの行程を考えると、
雨中の行進も辛いものではないと思えるから不思議だ。


ビルは、上に行くに従って薄暗くなり、扱う商品のアニメ度も高まる。

ゲーム関連の品が見当たらなかったのは無念だったが
最上階は、お店全体がプラモを作る場所になっていたり
アニメキャラをあしらった扇子や財布などが並んでいたり、と濃い店構え。
地元のマニア向けという感じだった。


ドラえもんが名探偵コナンのコスプレをしている人形など
いかにも自由な人形があるところも楽しい。


個人的には、「くまモンに心を乗っ取られつつあるファーファ」
としか表現しようのない人形があったのが目を引いた。
「お前、これでエエのか」と、何故かこのファーファに説教をする参加者も。

この空間は、すべてのものをカオスにする雰囲気が充満しているのであろうか。

(つづく)


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