【前回までのあらすじ】
パチモノゲームを求めて、上海までやって来た一行。
ツアーの前哨戦で、予想以上のパチモノ回収を実現し大喜び。
早速ホテルへ帰り、戦利品の確認を始めるのであった…。
よろず怪奇物事探究サークル・或隠舎 目目連(@mokumokuren)
※前回の記事: その1
■パチモノ、カニ料理説
怪しげな遊具や、どことなく妙な日本料理店の日本語表記などを見ながら
ホテルへ帰還する我々。
部屋に帰るなり、この日の「水揚げ」の確認が始まった。
各々がゲームボーイアドバンスSPを手に、
あの大量のゲームボーイソフトが果たしてきちんと起動するのか、
そしてどんなゲームが入っているのか、を確認する。
ゲームボーイ、アドバンスの起動音が部屋に響く。それ以外、ほとんど音はしない。
部屋の床にずらりと並んだパチモノを前に、4人がそれぞれ無言でゲームを起動する。
時々「うわっ何これ」とか「うーん、起動しない」などと声はあがるものの、
1人1人が独自の戦いをしているのは明らかだった。
「カニを食べると無言になる」と言われる。
この状況が、パチモノでも確認された瞬間であった。
カニの身をほじくるのに夢中なように、ソフトを次々に起動する。
楽しい。至福の時間だ。
■個人的ミッション
実は、この旅行において筆者は個人的に達成したい事柄があった。
それは「水木しげるゲームのパチモノを入手する」ということ。
筆者は水木ファン故に、水木しげる原作漫画を題材にしたゲームを
紹介、解説する同人誌「水木しげる ゲヱム異聞」を出している。
それら「水木ゲー」は、海外では、それとわかる形で出ているものは無いとみている。
ファミコンの『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』も、
海外版では『NINJA KID』だったのだ。
ここで、注目されるのがパチモノ。
どんなゲームでも貪欲かつ勝手に移植するパチモノだと、
水木しげるを知らぬ人たちの文化圏でも存在し得るのではないだろうか?
過去には、ある高名なコレクター様のご厚意で
『妖怪大魔境』のパチモノを入手することができた。
もし、それらがまだ存在していたなら。
それを上海で目にすることができたなら。想像するだけで興奮する。
そして、ソフト仕分けをしていたその時。
「目目連さん、これ、目目連さん好きなんじゃないですか?」
と、1本のゲームボーイソフトが手渡された。
『鬼 太 郎 中 文 版』
息を呑んだ。
確かに書かれている「鬼太郎」の文字。
アニメ4期のフォントだ。
見たことがないキャラ(知っている方は教えてください!)に、
白黒ゲームボーイ用ソフトに見えるが「ゲームボーイカラー」の文字。
完璧だ。とても素晴らしく、パチモノだ。
パチモノの水木ゲーは実在し、
しかもそれを直接、ここで目にすることができたのだ。
嬉しすぎる。
ドキドキしながら起動。
スタート画面には、巨大な「鬼太郎」の文字!
そして、その下には何処かで見たことがあるような、
鬼太郎とは違う感じのキャラが出てきているナリ!
ただ一つ言えることは、このソフトは完璧に「鬼太郎」であり、
そして完全無欠のパチモノである、ということだけである!
最高と言わずして、どう表現しようか。
■将軍様、そら肥えるわ
夕食は、この時間帯に合流したメンバーと一緒に「北朝鮮国営レストラン」へ。
国交がある国には、外貨獲得のためにそういった施設があるそうだ。
お店に入ると、おねえさんが笑顔でお出迎え。
メニューを見ると、中国語だけではなく、ところどころ怪しい日本語の表記もある。
そして何故か写真撮影をしようとすると制止される。お国柄だろうか。
タコの和え物、ユッケ、チヂミ、マツタケの炒め物、そして北朝鮮名物の冷麺など…
料理は予想していたよりも大量に出てきて驚いた。
どれもとても美味しいのだが、どんなに食べまくってもなくならない勢いだ。
これは、将軍様も立派に腹が出るわけである。
この店では、永年探し求めていたゲームをついに手にした同行者が
歓喜する一幕もあった。
初めて目にする珍しいゲームに、わらわらと集う我々。
あまりの歓喜ぶりに、お店の人が何事かと様子を見に来る始末だった。
知らぬ人から見ると、意味不明の軍団だろう。
■突然のショータイム
食事をしていると、それまで料理を運んだりしてくれていたおねえさんたちが
突然、ステージに立った。突然、大音量で流れ出す音楽。
そして突然歌い出すおねえさん。アリランだ。
聞き惚れてはいけない!若さが吸い取られる!
と、朝鮮魔法ネタを思いつく暇もなく歌は続く。
このレストランの売りの一つがこのショータイムのようだ。
中国語の歌や踊り、謎のマジックショー。バンド演奏なども披露された。
深夜のテレビCMであった「グランシャトー」の出し物みたいだなあ
と思いながら眺めた。
■「戦果」確認は深夜まで
料理を満喫し、部屋に返った一行。
別にホテルをとっているメンバーも、「戦果」を確認しにやって来た。
床に並ぶゲームボーイソフトを見て、ウンウンと唸る。
「カードキャプターさくら」の絵が大きくプリントされているゲームは、
起動するなりさくらの一枚絵が大きく出て来た。
しかし、肝心のゲームは全然別の物が入っていた。
どんなゲームなのか、ソフトの見た目からは想像できないのがまた楽しい。
「なんだこれは」というゲームの数々を見て、笑いながらも夜はふけていったが
翌日のツアー本番に備えて寝ることに。
永年探し求めていたゲームをついに手にした同行者の一人は、
そのゲームの箱をやさしく抱きしめながら帰路についたという。
異国でも発揮される、美しきゲームへの偏愛ぶり。
一同、かくありたいと再確認するのであった。
(その3へつづく)